ちょっとした発言に対して、カッとなって友達のことを叩いたり、蹴ったり、つねったり…こういった他者を傷つける行動のことを「他害」と言います。(反対に自分のことを傷つけるのは、「自傷」と言います。それはまた別の記事で)
他害は人に当たることだけでなく、モノを投げたり壊したりといったことも他害になります。
では、なぜ他害行為が出てしまうのでしょう?そのヒントは、他害が出た場面の前後の状況や環境に目を向けると分かることがあります。
①自分にとって不快な出来事があった
たとえば、
・友達に使っていたボールを取られたので蹴った。
・ちょっかいを出されたので殴った。
・嫌いな給食が出たのでスプーンを投げた。など
他害行為が出る前の状況を見ると、何かしらの理由があることが分かります。
また他害が出るのがある特定の友達や先生に対してだけという場合もあります。
ボク自身療育の現場で、子どもとプリント課題をやっている際に、腕をつねられたことがありました。他害の前には、イヤな課題を出された、疲れていたなどその行動に至る子どもなりの理由があります。
つまり、これらの不快な出来事を取り除く、もしくは減らすことで解消できる場合があります。
上記の例で言うと
・勝手に取るのではなく、友達に「ボール貸して」と言われる
・一緒に仲良く遊ぶ
・嫌いな給食は減らす などです。そのためには、その子が何に対して不快感を感じたのかを観察して知ることが必要です。普段お友達に対して手が出る子であれば、その前後で何が起きているかを整理してみましょう。
②適切な伝え方を知らない未学習
①で例に挙げた場面でも、適切な伝え方を知っていれば他害にはなりません。
・ボールを取られても「今使ってるから返して」と伝えたり
・ちょっかいを出されても、「やめて」と伝えたり、近くの大人に助けを求めることができれば他害にはなりません。
・苦手な給食が出た時には、「減らしてもいいですか?」と伝えられればいいわけです。
ただ、他害をする子の多くがその「適切な伝え方」を知らない未学習のことが多いです。
そのため日頃からSSTを通して「こんな時どうする?」と困りごとが起きた場面について考える機会を作ることが大切です。
そんなときおすすめの教材がこちら
合同出版さんより発売されている
「みんなの怒りスイッチをさがせ」です。
沢山の場面絵が入っていて、SSTの教材にうってつけです
③衝動性からくる行動
最後は、衝動性から考えるより先に手が出てしまうというケースです。こちらも①に少し関わってきますが、環境調整をして徐々に練習というのが効果的です。
たとえば友達とのトラブルが多い場合は、まずは遊ぶスペースや道具を限定して少人数から関わる練習をしたり、2人の児童に対して「ハサミは一つしか無いから順番に使おうね。借りたい時はなんて言ったらいいかな?」など、適切な声掛けが生まれるような事前提示をしたり、はじめのうちは対大人との関わりから練習するなどが効果的です。
他害が出た時のNG行動
人のことを叩いたり、物に当たったりする子を見ると焦る気持ちからつい
①「何やってるの!?叩いちゃダメでしょ?」と行為を否定する
②「叩かないって約束したよね?」と詰め寄ったり
③「叩かれたら、○○くん痛いよね?」と相手の気持ちを考えさせることがあると思います。
ですが、これらは逆効果になることがあります。
①前述したように他害行為にはキッカケとなる出来事がある場合があります。それを聞かずに頭ごなしに叱ったところで子どもには入っていきません。むしろ火に油で、この言葉をキッカケに癇癪を起こすことも考えられます。
②その子も叩きたいと思って叩いているわけではありません。こういった関わりよりも、「今の伝え方素敵だね」「ちょっと待ってってきちんと言えたね」など、うまく関われている場面を褒めた方が効果的です。
③発達障害の子には、目に見えない相手の気持ちや状況によって変わる抽象的なことを理解するのが苦手な子がいます。また、「だって!さきにちょっかい出してきたのはアイツだよ!」と子どもなりの言い分があったりもします。まずは状況の整理やその子が何に対して怒ったのかを一緒に振り返るところから始めてみましょう。
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